群青の隘路に

喚き散らかす

可愛い私には旅をさせろ【伊豆編】

 見た目も中身も別段取り立てて可愛いわけではない私がじゃあ何をもって己を可愛いと称するかというとまあ保身という意味での我が身が可愛いわけなんですけれど、この時点でだいぶ可愛げのない人間であることは露見してしまっているんですけれど、慣用句をもじってこんなタイトルになりました。上手いこと言おうとして大怪我です。

 さて、旅行記でございます。実は私この春休みの間に、旅行の予定が三件立っております。みどりの窓口には大変お世話になりました。というわけで、第一弾、伊豆です。卒業旅行として学部の友人達と、一泊二日で伊豆に行って参りました。

 

 泊まるところだけ先に決めて後のことは前日に決めるというノープランぶり、おかげで少々ハプニングに見舞われることもありましたが、総合してとても楽しい旅だったと思います。伊豆は初めて訪れる土地でしたし、普段大学でつるんでいた友人達が(自分を入れて)九人も集まったとなればそれも賑やかです。私の場合ゼミでの卒業旅行がなかったので(そういう話題が一切出ませんでしたそういえば。各々それどころじゃなかったというのもありますし、そもそも好き嫌いを別にしてそういう話をするような間柄でもなかったというか、つくづく個人主義を貫き通した結果のようでこれがまた面白くもあります)、友人とわいわい行く旅行はこれだけです。ゆえにとっても楽しかった。私は空気の読めない人間ですが不出来なりに気ィ遣いなところもあって、まあそれが他者にきちんと機能しているかどうかは別の話なんですけれど、つまり人と接するのは精神的に余裕があって体力的にも元気な時でないと出来ない人間だったりします。そんなクソコミュ障根暗でも、やっぱり卒業旅行となるととても楽しかった。さっきから語彙力が死んでいますね。文字書き名乗っていても楽しい時には楽しいとしか言えないんですね。

 まず修善寺周辺の観光をしたのですが、そこで穴場的なお蕎麦屋さんに出会えたのが僥倖でした。本来目指していた通りと一本間違えて入ってしまったから見つけた、というハプニング的な出会いだったのですが、結果的にはむしろオーライだったのかなと。掘っ立て小屋のような藁ぶきのお店、どう考えても何だか訳アリっぽいお蕎麦屋さん。興味を惹かれて皆で入ってみると、運よく作り立ての蕎麦を食べられるというタイミング。陽気で親切な店主のおじさん(一人で経営してらっしゃるようでした。忙しそうだった!)十割蕎麦のお任せコースをワンコインで食べられるという破格ぶり。目の前で作って下さるのも大変興味深かったです。山葵をすりおろすのも皆にやらせてくれました。お高い山葵だそうな。麺に塩と山葵だけを乗せた塩蕎麦、つゆを足した蕎麦、そして残りのつゆにゆで汁を加えた蕎麦湯の三段構え。滅茶苦茶美味しかったです。お店の風貌からしてもちょっと怪しいな、という感じだったのですが、テレビ番組でも多く取り上げられているお店だったようです。食べログにも載っていました。次に伊豆に来た時にはまた会いたいおじさんとお蕎麦でした。

 泊まったログハウスも素敵な場所でした! コテージ、と聞いていたのでこう、水上コテージのような小さな建物が連なっているのを想像していたのですけれど、本当に西洋風の木造の大きな家で。部屋数も多いしベッドもあるし毛布はふかふかだしトイレとお風呂は清潔だし、広くて綺麗。そして可愛い。そもそもちょっと遠方でお泊り会しよう、というのがメインイベントだったこともあり、宿泊先では終始ハイテンションでございました。肉を買い込みすぎて全員フードファイターのようになったり、日が落ちて冷え込んだバルコニーでバーベキューをしながら炎上を楽しんだり、お酒を飲んだり。食事の後は友人の手法でメイクを施してもらったり、お風呂で巨乳が湯に浮く瞬間を目撃して感動したり、ツイスターゲームやトランプなどで遊んだり、夜中の三時まで遊び呆けておりました。その後は何人かに分かれて雑魚寝したのですが、隣で眠った友人から知らぬ間に布団を奪ってしまっていたようで本当に申し訳なかった。歯ぎしりは大丈夫だったかな。不正咬合の十八番なんですけれど、皆の眠りを妨げていなければいいなと思います。

 二日目は沼津の方まで足を運んで、ボリューミーな海鮮丼を頂いたり、深海水族館を見学したり、比較的まったりと過ごしておりました。カワテブクロでしたっけ、五本チ〇コが生えてるみたいなヒトデ。あれを初めて生で見ました。日頃から下ネタばかり言っているしエロ小説ばっかり書いている手前、「由野、ほらこれ!」と声をかけられましたが、実物割と気持ち悪いんですね……。ぎょっとしている私より「これあれば五人同時にヤれるね」と言い放った友人の方がよほど酷いと思うのですけれど、変態扱いされて大変遺憾でございました。ちなみに風評被害! と喚いたら日頃の行いを諭されてぐうの音も出ませんでした。人徳とは日々の積み重ねである。あとは色のついた骨格標本が、そこはかとなくオシャレで可愛かったです。グロテスクなんだけどきらきらしているというか。

 帰りは路線によってばらけてしまったのですけれど、兎角、楽しい一泊旅行でした。特にログハウスが本当に素敵で、出来ることならもう一泊して一日そこでだらだらしてみたかった。予約や手続きを率先して行ってくれた子や、レンタカーを運転してくれた子、料理をさっと作ってくれた子、色んな友人のお世話になった旅でした。本当に有難う。皿洗いくらいしか貢献出来なくてごめんね。

 

 前日に打ち合わせをして別れる時、「また明日ね」って言えることが、何だか面映ゆかったんですよね。私は四年生になってからすっかり学校に行かなくなってしまって、というのはもう取るべき単位を取得していてゼミしかなかったからなんですけれど、それにしたって何か潜りでも授業に出ておけばよかったと思う。友人と会う機会も減って、また明日を言う機会も減りました。だから旅行前日、そりゃ結局当日ノープランでバタついたこともあったけれど、そう言って別れられるのは存外貴重なことだったのだと思い知ったり。当たり前にあった明日は、もう、そこに無くなってしまうんですよね。中学校や高校に上がる時もぼんやり思っていた寂しさはこれだったのかなあ。附属だったこともあってこれまでそうした寂寥感は薄かったのですけれど、今になってやっと明確に感じる。約束された未来なんてない。時間は有限で、いつまでも会える明日は無いのです。そう思うと尚更、旅行の間、楽しかったことだけが美しく蘇ってくるようでございます。

 卒業式まであと一か月ほどで、それが本当の区切りになります。また卒業式に、あるいは、その前後のいつかの機会にね。至らない私と、遊んでくれて有難う。