群青の隘路に

喚き散らかす

十姉妹の巣立ちは近いか

 『おそ松さん』17話を見てからというもの、バイト中の発声のイントネーションがどんどんカラ松兄さんに似てくる病に罹りました。「ありがとうございまァ~↑す」

 というわけで、17話の感想です。2月第一週は泊りがけで女子会やったりバイトが三連勤だったりコスプレ併せでカメラマンしてたり同人イベントに出ていたりゼミの追いコンに参加したりと多忙を極めていたために、随分まとめるのが遅くなってしまいました。もう18話放送しちゃったじゃん。ちなみに最速放送日はもう三年近い付き合いになるオン友とラブホ女子会をしていました。バスローブ姿の女子三人(四人で行ったのですが一人は先に寝落ちていました)がラブホテルの大きなテレビで松を見ている状況、控えめに言ってめっちゃ面白かったです。Oh…yeah…

 

【十四松まつり(アバン・Cパート)】

 ホントにお祭りだ……スタートから訳分かりませんでした。残された兄弟は十四松になってしまったのか、それとも十四松のように振る舞ったのか。総じて17話は概念や指針などを引喩しているような気がしています。唯一正気であったチョロ松も、ラストにはおそらく同調しているし……。あのどんどん遠ざかってく侘しい祭りの後、夜の帳に消えていく十四松達。何を意味しているのでしょうか。他の話を汲み取りつつ、うんうん唸ってみようと思います。ちなみに神輿の提灯が「十四松祭」ではなく「十四祭」であること、語呂の良さの他に理由を考えるとぞっとします。十四松が、松を無くしました。

 

【十四松と爆弾】

 トド松警部補再び! なごみ探偵の時はジェイソン役だった一松が、今回は警部? の位置になっていますね。チョロさんはどうしたのだろう。8話Aパートの時点で「チョロ松がおそ松の暴走を操作・肯定し、しかし一切の責任を持たない」ということが描かれたような気がするのですが、17話まで進んだ段階でその役(=警部)を一松に譲ったということなのでしょうか。13話で割と派手に喧嘩したしね……。しかし一松も一松で16話がありましたから、おそ松兄さんこのままでは誰も味方がいなくなるのでは? と要らぬ心配をしています。

 さて、本編。仕掛けられた爆弾を前に緊迫する一松警部とトド松警部補。そこに爆弾処理班を名乗る十四松が登場しますが、一松は十四松の存在を現実とは思えていませんね。トド松はまだ認めているようですが、その素性の知れなさに困惑している。そんな二人をさしおいて、十四松は爆弾目がけて銃を発砲します。「爆弾を処理しに来ました!」ニコ動のコメントで「銃始末」って書かれてて笑いました。誰が上手いこと言えと! 最終的に爆弾は銃弾を受けて爆発、一松とトド松は吹っ飛ばされていきます。十四松もまた爆風を受けて打ちのめされました。

 この話は十四松の核弾頭ぶりであるとか、手段・目的を選ばないところを描出したのかな、と考えています。「爆弾をないものにする」という目的だけの為に、周りが滅んでも自分が滅んでも構わない手段を取った。以前のアダルトチルドレン考察で十四松はカラ松と共に滅私奉公をしていると書きましたが、もしかしたら、もうその役割は成立していないのかもしれません。十四松は9話で彼女と別れる際、外界の境界まで走りました。あの時は駅のホームで力尽きたので外界に行くことはありませんでしたが、あの経験は何か十四松の中で「六つ子の平穏を守る必要がない」と気付く大きなきっかけになったのでは、と思います。13話までは兄弟喧嘩に参加していますが、14話では兄弟の知らない株取引の一面を見せている。しかもトド松の兄弟ランキングに対し十四松だけは「教えろ馬鹿ー!」と野次を飛ばしていました。そんなランキングが明らかになったら、どう考えても兄弟間は不穏になるというのに。十四松はもう、滅私奉公をやめようとしているのかもしれません。

 

【十四松と夜食・十四松と研究】

 どちらもおそ松との絡みの話ですね。「十四松と夜食」では夜食を我慢する二人が描かれています。この二人は欲求を我慢出来ないこと、そしてそれを封じるためにまた手段を選ばないということが明かされました。二人ともぎちぎちに縛られて動けなくなっている状況でも、箸を伸ばそうとしたのはおそ松でしたねえ。二人で分けあおうとした割に、十四松は転がしたまま……。また「十四松と研究」では博士に扮した二人が謎の薬を開発し、それを十四松が飲みますが、結局それが何の薬かも分からないで終わります。しかも十四松はさらりと生まれつき持っていた能力を明かし、おそ松はそれを笑い飛ばして許容する。長男はどこまで兄弟のありのままを受け入れていくのでしょう。ここまでくるともう「お前がどうなったって俺には関係ないから好きにしていいよ」と言っているような気がしてきます。もうおそ松は十四松に対して、何の権力も振りかざせていないような……?

 

【十四松とコミケ

 腐女子煽られてるぞー!!! チョロ松は3.5話でもアニメを見ようと言及しているシーンがありましたし、コミケに来ている辺り、アイドルヲタだけじゃなくてアニヲタもやっているのかもしれません。にゃーちゃん、声優アイドルとかだったりして。腐女子用語と野球用語の応酬がめっちゃ面白かったです。しかしチョロ松よ、それ、「野球をやっている人たちのホモ本である可能性」なきにしもあらずだぞ。数ある本の中からスイッチヒッター選ぶチョロ松にドキドキしてしまいました。そうかあお前リバ可かあ。しかし同担拒否とは……十四松どうしてその本出したの……。正直この回に関しては何の考察もしていません。ただ十四松はマジで兄弟(≒視聴者)に対して秘密にしていることが多すぎる……。

 

【十四松と移動・十四松と秘密】

 筋肉松の絡み有難うございます。一緒にパチンコ打ちに行くくらいには仲良しなんだなと安心しました。しかし相変わらず十四松は手段を選ばない……移動手段が兄の身体を筋斗雲にすることって、もう。十四松は多分他の兄弟相手でも同じことする気がしますが、それで怒らないのはカラ松だけな気がしないでもない。そもそもパチンコ行くのに遅刻も何も……。その後夕方になるまでパチンコを打った結果、カラ松だけが勝ち、十四松は負けました。そしてカラ松は「たかられる可能性があるから他の兄弟には内緒だぞ」と言い聞かせて飴を渡します。飴って! 成人男性捕まえて口止め料が飴って! 筋肉松妖精さんかよ? というか十四松単体ではたかってこないことをカラ松は分かっているんですね。秘密にしたいなら一人でいけばよかったわけですし……ここ二人は何だか裏で通じ合っている感じがありますな。

 さて、そこから十四松はわざとか? ってくらい嘘がつけないわけなのですが。やり取りにめちゃくちゃ笑ったわけなのですが。何だよCRただいまって。何だよアイニージューシマツって。名言の宝庫か。本当に面白かったのですが、ふと、カラ松のあげた飴の色が気になるなあと思ったので考えてみます。

緑色の飴→「カラ松兄さんがパチンコにすっごい勝ったよ」「忘れたか?俺がパチンコに勝ったことは言っちゃダメなんだ」

青色の飴→「カラ松兄さんがパチンコに負けたよ! 負けた負けた(略)」「怪しすぎる、パチンコの話題に触れないでおこう」

紫色の飴→「CRただいま」「CRをつけちゃだめだァ!」

黄色の飴→「パチンコー」「わざとかなンン~!?」

 緑(=チョロ松)の時は正直な告白、青(=カラ松)の時はカラ松を庇う嘘、紫(赤にもピンクにも見えますが一松)の時はひねくれたトンチを利かせる、そして黄(=十四松)は頭の中を占めていたことをそのまま出した。そんな風に読み取ったら面白いかなと思いました。兄弟に対する振る舞いがあのまま出ていたというか。チョロ松には兄弟の公平性を期すために正直に言うし、カラ松にはカラ松が望む嘘を下手くそながらつくし、一松にはコントをするようなひねりを加えてくる。一連の流れが見ていて面白かったです。最終的にトド松に見透かされて「勝ったんでしょ!?」「勝ってないよな!?」の板挟みになった十四松は、頭からパチンコ玉を噴出するわけですし。

 しかしこの話本当に好きです……筋肉松の絡みはもちろん、トド松の「兄弟に嘘つかないで」発言(お前が言うな)やら、十四松から出たパチ玉を集めもせず自らの強いた嘘を詫びるカラ松の優しさとか、もう……筋肉松最高かな……

 

【十四松と概念】

 一番怖い話でした。十四松が「十四松とは何か?」を考えた末、文字だけの姿になっても問題ないという結論に達する。姿を変えても声を変えても十四松なら、文字になっても変わらない。「自我とか自己認識とか存在意義とか、案外小っちゃくてどうでもいいことなんだ」と、十四松自身が気付いてしまいます。もっと身軽になろうとして、そして十四松は十だけになります。そこに一だけになった一松が戻ってきて、「プラスとマイナスみたいになってる」「結局僕達って何だ?」「ていうかこの話って何だ?」という締めで終わります。二人が合わさって、後には虚無だけが残る。

 私はこの話で、とうとう十四松が松野家の六つ子であることから脱却したのではないかと思いました。私は元々十四松の振る舞いをピエロの演技だと思っていました。ピエロであることが六つ子の中での自分の存在意義だった。でもそれは些末な問題であり、そんな重たいものをもう背負っている必要がない。そう気付いてしまったのかなと思います。だからといってじゃあどうする、という結論が出ていないのは本編の通りです。一松と十四松で十五、完璧な存在になれるのだというのは以前お話しました。しかしこの回では真逆、十と一になって±ゼロ。消滅という選択肢が提示された。六つ子の中に入れば完璧な存在でいられると思っていた二人は、その自己認識をかなぐり捨てた時、そこから消えてなくなるという道を選べるのです。もう松野家という箱庭は、綻び始めているのかもしれません。消えるということは、外界への旅立ちを指しているのかしら?

 

【十四松と手術・十四松パン】

 「十四松と手術」は、末松のパラレル回でした。手術を怖がるトド松の前に現れる謎の野球青年・十四松。プロ野球選手でもなければテレビに出ているわけでもない、トド松の事情も詳しく知らない、挙句勝手に布団に入ってきて「おやすみ、十四松くん」「十四松はお前だろ!」というやり取りの末に眠ってしまう。セオリー通りの行動を一切してくれない得体の知れない男にトド松は恐怖し、早く退院したいから手術してと喚くことになります。トッティ泣き顔可愛いな……。「十四松パン」はピーターパンのパロディ。夢のような場所に行きたいというトト子ちゃんを、十四松といちま……一松? これは女装なのか女体化なのか分かりませんがティンカーベル役の一松が連れ出します。しかし連れていくのは全て野球に関する場所。十四松や一松にとっては夢のような場所ですが、興味もなければ花もない場所に連れて来られたトト子ちゃんは呆然としています。最終的に置き去りにされて、トト子ちゃんは泣き叫びます。

 この二つの話に共通しているのは、「十四松の行動はほぼ思惑通りには作用しない」ということです。自由気ままに振る舞ったことで、トド松は手術への覚悟を否応なしに決めることになりました。十四松がどのような気持ちでトド松の病室に現れたのかは分かりませんが、これまでの流れを見るに、おそらく「トド松に手術を決心させよう」といった企みはなさそうです。十四松はそこまで回りくどいことをこれまでに出来ていません。逆にトト子ちゃんの為にと夢のような場所へ導いたことで、逆にトト子ちゃんは打ちひしがれて恐怖する羽目になります。十四松の行動は人を恐怖させる。その上で、思わぬ形で人を救うし、思いやりが裏目に出て人を傷つけもします。滅私奉公などとんでもない。十四松はもう、自分本位に生きる道を選択し始めていると思いました。自分の行動で相手がどうなるか、そこまで考えが及んでいない。救われた誰かがいたのは結果論にすぎません。核弾頭、恐ろしいですね。

 

【十四松と薬】

 ホームラン打つ為にドーピングしたらキンタマがでかくなった回です。(終了)

 ……いやもうこれ考察無理だろ!? ドーピングとかそういう不正はやったらいけませんよっていう寓話としか捉えられないです、めっちゃ笑いました。そもそも遠投80メートル近く投げられる奴が何をドーピングする必要があったのか……。さすがの十四松もキンタマ引きずるくらい大きくなったら泣くんですね。あれどうやって治したんだろう……。十四松攻めが好きなクソ腐女子なので、任意の受けと治るまでひたすらセクロスするエロ同人めっちゃ読みたいです。精巣空っぽになるまで頑張れ、十カラ辺りで一つお願いします。もしそんな漫画を見つけたらぜひ教えてください。

 

【十四松】

 いつから十四松はあんな風になったのか? そこ掘り下げるんですね『おそ松さん』、怖いよ、怖いよ! 一松とカラ松が普通に会話したことにはめちゃくちゃ喜んでいましたけれど、それはさておき闇の深そうな話題です。幼少期からおそらくずっと隣にいたであろう一松は、「少し前まで闇を感じていたけどそんなことはなかった、あいつは十四松というジャンルなんだ」と明言します。おそ松はそれを受けてアルバムを引っ張り出しますが、高校生になった頃からああなったことが明らかに。しかし赤ん坊の頃の写真で唯一状態を異にした兄弟がいることも発覚し、おそ松はアルバムを封印。何事もなかったかのように飲みに行くことを提案し、兄弟もまたそれに納得します。

 私は十四松の振る舞いをピエロの演技だと思っていたと言いました。そしてそれは、『おそ松くん』時代には真面目で粋な性格であった一松の変化に伴うものだと思っていました。5話の一松の告白から察するに、彼はどこかで一度人間関係に関して挫折を経験している。そこから卑屈で無気力な性格になってしまっている。となれば、その変化のタイミングで十四松がピエロになるのが自然だと考えたのです。一松が鬱屈していくのをどうにかしたくて、十四松がピエロになった。いじめられていたとかそういう経験があったとするならそれは一松の方だ、そう考えていました。しかし一松のこの言い分からすると、おそらく一松にも大きな揉め事はなかった。ほんの些細なことがあって、ナイーブな一松はそれに傷付き、そして十四松が連動した。そう見るべきなのかなと思います。そうするとやはり十四松も根は優しくて穏やかな青年なのだろうなと思いました。自分がやりたいからピエロをやっている、けれど、それが重荷になってきた。17話は総合するとそういう話なのかしらと。

 赤ん坊の写真ですが、あれはいくつか考えに選択肢があってまとまっていません。あれが十四松だったとするなら、ピエロの素質を生まれながらにして持っていたか、あるいはその狂気を高校生になるまで隠していたかの二択。そしてあれが、十四松でない可能性もある。生まれたてで見分けもつかない六つ子を寝かせるなら、上から端に順番に並べるのが妥当ですからね。そうするとあの問題の赤ん坊はおそ松かトド松ということになる。とはいえ松代の左隣の子だけ眉毛が濃い(=カラ松?)ということを考えると、奇数偶数で割り振った寝かせ方なのかなとも思うし……十四松という存在、もう、謎です。こわい! 飲みに行こう!

 

【次回予告】

 ブックオフ三国志全巻置いてるかなあ……暇を持て余している上に立ち読み上等のカラ松、クソニート丸出しで最高です。クソ野郎養ってやる。私が小学生の頃図書館で読んだ時はハードカバー五冊分くらいだったような気がしないでもないのですが、もう随分記憶が曖昧ですね……もしかしたらまだまだ続きがあっただろうか……。何となくカラ松は文庫タイプか、そうでなければ漫画版を読みそうな気がするので、相当の時間をブックオフに費やすのだと思います。ブックオフ痴漢多いから気を付けろよな。というか男の生き様、せめてオザキから学べよ。もう初期設定がぐだぐだだよ! ちなみに私は魏の武将・夏候惇が敵に目を射られた際、「両親から貰った血肉を捨ててはいけぬ」と矢を目玉ごと引き抜いて、その眼球をかっ食らったシーンが最高に好きです。

 

 17話は総じて、十四松という存在とその行く末を描出した回だったのかなと思います。そして思うのは、やはり十四松は六つ子の中から抜け出せるようになってきたということです。9話で恋と外界を知った、11話で男は金だと知った、14話で兄弟に隠れて株をやっていた。そして17話で、存在意義を放棄することを知ってしまった。もう、六つ子の核弾頭に固執する必要はない。十四松はその気になれば、狭い箱庭から出ていけてしまう。ジュウシマツは、空へ飛び立ってしまうのでしょうか。

 次回は「逆襲のイヤミ」ですね。何が来るやら。