群青の隘路に

喚き散らかす

僕はお前(の清らかさに見合わない自分)が大嫌い

 次回予告の十四松「じゅーーーーーーーしまつまつまっボエェエ」

 16話視聴直後の私「ヴォエェエ……(キャパオーバーによる嘔吐)」

 

 というわけで、『おそ松さん』16話の感想です。前の記事で16話をきっかけにちょっと苦言めいたものを漏らしてしまった手前、一ファンとして感想を喚くのは気が引けなくもなくもないのですが、ギャグ回としても腐女子的視点でも大層面白かったこの回、やっぱり口に戸は立てられませんでした。「引けなくもなくもない」って要するに気兼ねはしていません。わはは。

 

【アバン】

 一松が就活してる……! こいつちゃんと人とコミュニケーション取れるし頭を下げられるじゃん!? と開始数秒で感動しました。猫カフェとは何てお誂え向きな……ニート卒業か……? と思いきや、まさかの猫での配属希望。お前何なんだよ!?(cv.15話サラリーマンチョロ松)しかしにゃんこになってにゃんこと一緒に丸まってる一松、めちゃくちゃ可愛いし和みました。

 

【Aパート「松野松楠」】

 まつのまつくす、という不思議なタイトル。聞くところによると映画『マッドマックス』のパロディだそうですね。私は元ネタの映画を見ていないので、本編をどれだけなぞっているのかは分かりませんが……。骨組みとしては以下の通り。

・何やかんやで戦争が起きて世界は潤いを失う。人類のお肌平均年齢は200歳に

・そこにファンキーなギャングと化したイヤミ、チビ太が仲間と登場。村民を虐げて唯一の希望であったローションを奪おうとする。しかし正義のヒーロー、F6が現れ、敵を見目の麗しさで魅了。ギャング達を追い払う

・村民から搾取の実情を聞くF6。皆に「ぬるぬるぐちょぐちょどぅるどぅる」を取り戻す為、ギャングのアジトへ乗り込むことに。そこではギャングのボス、デカパンがローションを占領していた

・そこでもF6はギャングを魅了。一度は追い詰められるも結局はその美しさゆえに敵を屈服させ、「ローションまみれにされる」ことによって神となる

 何を言っているのか分からなくなってきました。これ、全部公式なんだぜ……? トド松がやたら短いショートパンツ履いてるのも、六つ子達が次々ギャングを惚れさせていくのも、「やっちまえ!」という言葉が「ヤっちまえ!」と解釈されるのも、ローションでぬるぐちゃになるのも、全部、公式なんですよ……? 私は何を見ているのか分かりませんでした。皆に潤いを取り戻すはずが、結局民衆は自身がどれだけ苦しんでも「F6がぬるぬるになるのを見る」ためにそのローションを六つ子に捧げます。ハッピーエンドなのか? と疑問視するナレーションに、チョロ松は半ば強制的に「ハッピーでしょ」と納得させる。搾取する人間が変わっただけじゃねーか! 皆が幸せならそれでいいけど、って、お前ら! 当初の目的! おい!

 いやあ物凄い回だった。ぬるぐちゃになりながら戯れる兄弟とか、とにかく明るいカラ松とか、「公式がホモネタローションプレイネタ出してきよったよ……」と震えることしか出来ませんでした。めっちゃ笑った。強いて深読みするのであれば、何だか「救いの概念」みたいなものに触れられたような気がします。救済とは肉体的・経済的なものではなく、心理的なものによってなされるというか。そしてその救いをもたらすものは、客体として消費されることを前向きに受け入れていくことになるのだ、とか。

 

【Bパート「一松事変」】

 本題です。骨組みは以下の通り。

・カラ松のファッションに以前から興味があった一松は、本人が眠っている隙に脱ぎ散らかされたその服を試着する

・しかしそこでおそ松が帰宅。事実を知られたくない一松は、咄嗟にカラ松に成りすましてしまう。どうにか誤魔化そうと奮闘する一松。しかしまさかのタイミングでカラ松本人が起床

・カラ松は咄嗟に一松に成りすまして事なきを得る。しかし衣服を戻そうとしたタイミングで揉めあいになったところをおそ松に見られ、誤解を受けて終わる

 骨組みだけでもだいぶもうやばいのですけれど、とにかく本編が、やばい(語彙力)

 私は前々からちらほら触れているように一カラが本命です。そしておそらく松のCPの中ではこれが最大手となるのだと思う。しかしこの二人、最大手でありながら、これまでろくずっぽ本編で絡んだことがありませんでした。1話が客寄せの宣伝回であったことを踏まえれば、2話が実質的な初回であったわけですが、そこで唐突に「カラ松に絡まれた時の一松はやばい」という情報だけを与えられた。何その執着どういうこと、カラ松カッコつけのくせに弟に胸倉掴まれて泣いちゃうの可愛い、無気力一松がどうしてやばくなるの、知りたい、気になる、なんでや、……この最初のエピソードを後生大事にして、私は一カラに落ちました。しかし二人はすれ違っていきます。カラ松はどんどん不憫になって言葉も少なくなり、逆に一松はどんどんキャラがぶれて何を考えているのか分からなくなる。カラ松は一松に声をかけることもなく、一松の方から積極的にカラ松に暴力的な絡みをしに行っている……。石臼、バズーカ、クソ松という暴言、プレゼント交換での涙……そうしたささやかなものを拾っては、私は「一松がカラ松に何かしら思ってるのは分かった、でも何を思ってるのかは分からない」「執着してる時点で好きだろうが嫌いだろうがホモだよ」「カラ松にとって絶対一松は何でもない存在だろ」「このまますれ違って会話もないまま終わるのかな……」「でもゆーてこいつらいつも隣キープしてるじゃん!?」エトセトラ、自分の中で上手いこと二人が幸せになる妄想も出来ないまま、pixivの神作品に慰められる日々を送っていました。とはいえ回を追うごとに絡みがマイルドになってるぞ! と前向きに。そして2クール目に入りました。「じょし松さんで一子とカラ子会話した! しかもかなりディープな仲っぽい!」とか「おい風邪ひいてるとはいえこれ会話したぞ初めてでは? 初めての会話では?」などとはしゃいでもいました。ゼミの友人(毎度おなじみ設定厨の彼女です)がカラトド好きであるにもかかわらず「ねえマジでごめんなんだけどどうしたら一カラ幸せになれると思う?」と問いかけ、「いや一松じゃ無理じゃない?」と一刀両断されることがあっても、私はただ前向きに一カラかわいいかわいいしておりました。が、15話。私はブチ切れました。カラ松がどう考えてもダメな女に入れ込んでいくことを、一松がさも理解者のような顔をして「ぽいわー」としか言わなかったからです。ギャグアニメだということは分かっています、ギャグアニメを楽しむ私は15話も大いに笑いました。けれど腐女子の私が、カラ松ガールズの私が黙っていなかった。5話で「兄弟だからといって無条件に愛されるわけではない」と知り、以降言うべき科白を必死に集めて注目を浴びようとし、10話で「直すところがあるなら言ってくれ」と改善を試み、13話でもそれを繰り返し、愛される為には愛さねばと14話では過剰なほどの兄弟愛を見せたカラ松。しかし彼の「愛してくれ、愛させてくれ」という絶叫は、いつだって兄弟には無視されてきました。誰も与えてくれなかった、誰も求めてくれなかった。そんなカラ松に、「あたしカラちゅんがいないと死んじゃう」と喚く女が出来た。「何が欲しい?」と聞いても無視されてきたのに、「バーゲンダッツが欲しい」と喚いてくれる彼女が出来た。そんなの、たとえ見た目も中身もブスだと分かっていたって、大切になるに決まってるじゃないですか。やっと求めてくれる人が出来た、やっと愛してもらえる時が来た。カラ松がフラワーと共依存に落ちることは自然です。それを、一松は、止めもせず、物知り顔で、「ぽいわ」と言ったのです。私はキレました。

 な~~~~~~にが「ぽいわ」じゃ!!!!!!!!!!

 あんたが、あんた達が、ずっとカラ松に何もしてこなかったからこんなことになってるんだろうが!!!! あんたに何が分かるのよ!!!!あんたはカラ松にしてほしいこともしたいことも言わなかったくせに!!!! その怒りの中で、16話、「一松事変」。私は恐怖しました。5話「カラ松事変」(および「エスパーニャンコ」)はいまだにトラウマです。事変の名を冠するこの話、絶対にただでは済まない。私は酷く恐れました。視聴前に酒を飲み、ストーブにかじりついて酔いを回し、どんな鬱が来ても大丈夫なように構えました。もしまたカラ松が不当に割を食うことがあれば、一松が不当に寵愛される、あるいは断罪されて追放者が増えるだけのようなことがあれば、その時は私が松野家に火を放つ。そして焼け跡でカラ松の手を取り踊りながら、地獄の釜まで共にあることを泣きながら誓う。そんな気持ちだったのです。そして迎えたBパート。

 待ってくれ。待ってくれ、公式。誰がここまでやれと言った。

 いやもう、凄いどころの騒ぎじゃない。16話まで全く分からなかった一松のカラ松に対する感情が、やかましいくらいのモノローグによって紐解かれたのです。一松心の声結構うるさいよね。口に出さないだけで、テンションはチョロ松に似ている。楽しくて好き。ちゃんと友達出来ない自己分析とか出来てるのも笑いました。脱糞未遂をした後ではせやな、しか出ないのがまた。

 「一回カラ松のファッションを着てみたかった」「でも素直には言えない」「俺もおそ松兄さんみたいにバカ正直に言えたらなあ」「普段カラ松と間違われるのは地獄」……これ、完全にカラ松のこと嫌いじゃないでしょ。痛々しい馬鹿、と見下げているのは事実かもしれないけれど、心底憎くて嫌っているわけではないのは明らかです。私は一松が持つ執着の正体は「カラ松への劣等感」だと思っていました。同じ六つ子で揃ってクズ、なのにどうしてこいつはこんなに自信満々で人生を謳歌しているんだろう。俺は燃えないゴミで生きる気力もないのに。そんなところでしょうか。それがある意味で補完された。一松はカラ松に、ある種憧れていたとみるのが自然でしょう。よく考えたら一松は4話でロックバンドのコスプレをしています。系統としてメンナク系に興味を持つのはけしておかしなことではない。そして目覚めてしまったカラ松は、寝起きで状況も良く分からないまま、しかしそこにいるのが一松だと一目で見抜いた上に「一松が何か困っている」と判断します。その結果一松のふりをする。私は感動しました。やはり松野カラ松は正道を歩むヒーローたる人格だった。あの状況下で的確な判断を下し、演技力はお察しであったけれど(カラ松にとって一松はただ猫が好きな青年であり、みんなが言うような闇人形だとは思っていなかったからなのかもしれません。2話の「俺は信じてる」が今も生きているなら私は……私は……)「何かよく分からないけれど一松に口裏を合わせる」行動力と度胸を持っていた。ただの馬鹿ではなかったのです。そしてそんな兄に、一松は胸中で心底感謝することになります。涙を流しながら衝撃を受けるのです。「カラ松ー! カラ松カラ松カラ松ゥゥ! 神か!? 神なのかこいつ! 逆に死ね!」「マジ何なんだよこいつの優しさ! 逆に死ねよ! 俺はもうカラ松ボーイズだよォ!!」一松は完全に屈服しました。劣等感を抱きながら見下げた兄の、打算のない聖人のような優しさにひれ伏しました。あれだけ嫌いだというポーズを取っていたのに、一松はカラ松を神と定め、「俺はもうお前のファンだ、お前を愛し崇める存在だ」と宣言しました。感極まって出た言葉が「逆に死ね」でしたね。これ、腐女子が推しの可愛さに逆ギレするテンションによく似ていました。つまりこの言葉が意味するのは「尊い」「好き愛してる」です。一松は完全にカラ松に落ちた。これまでにもう落ちていたのかもしれないけれど、少なくともその気持ちを受け入れた。もう一松がどんなにカラ松に冷たい態度をとっても、それは全て「愛情の裏返し」だと証明されてしまいました。ここまでくるともう「嫌い」という態度さえ、それはカラ松に向けたものではない気がしてきます。カラ松に対して素直になれない、カラ松と比べて日陰にいる、そんな自分を突きつけられるから、嫌い。僕はお前が大嫌い。僕はお前の存在によって思い知らされる、自分の矮小さが大嫌い。……まさか公式で、本編で、こんなアンサーが来るなんて誰が思ったでしょうか。少なくとも私は視聴前に抱いていた怒りを全て霧散させてしまいましたし、もっと言うと気付けの為に飲んでいた酒のせいで随分気分を悪くしました。ヴォエェエ。

 しかもカラ松はカラ松でちゃんと一松に文句を言える。怯えて縮こまるばかりではない。「おい何やってんだ一松びっくりしたよ!」と、一松のことを責めるでもなく、きちんと自分の感情を言いました。あれは演技でも科白でもない、素のカラ松の言葉でした。そして一松に胸倉を掴まれて涙を浮かべはするものの、「強気!? この状況で強気!? 嘘だろ!?」と反駁することが出来る。一松とカラ松の関係性を、やっと、公式が描出してくれたのです。何かもう、安心して幸せラブラブな一カラを書ける気がしてきました。しかもこの二人、二人だけの「墓まで持っていく」秘密を得たわけですからね。ただカラ松を近親相姦ホモに仕立て上げて、その上強姦魔のレッテルまで貼った一松はホントクズだなって……そこは「貴様!」とはなりましたけれど。とはいえ一松の中には「お前が好きだから脱ぐのが恥ずかしい」「嘘じゃないわよ」ってイメージがホモというものにあるのでしょうか、と気になったり。発想が完全に女役じゃないですか。それはお前がネコ希望ってことなのか、それともカラ松がネコであってほしいという願望か、どっちだ! 私は後者であってほしいと思うぞ!

 あとはおそ松兄さんが気付いていたのかどうかは気になるところではありますが、こればかりはどちらの解釈でも面白いと思います。気付いていたにしてはあまりに一松の地雷を踏み抜きすぎているし悪口も言いまくっているし、気付いていないにしてはカラ松への違和感を羅列するシーンがめちゃくちゃ一松に絞り過ぎているようにも思う。正直その辺りは考えが及んでいません。ただ着々と兄弟が外界へ出ていく(十四松は9話での恋や14話で発覚した株取引、トド松は14話で発覚した趣味、カラ松は15話で至った結婚。彼らは外の世界での自分を持っています)中で、ずっと離れたくないと頑なだった一松まで敵に回して大丈夫なのかしら? とは心配してみたり。お前ただでさえチョロ松のこと敵に回しがちなのに……。

 

 巷ではこれが腐女子媚びだの何だのと言われていますが、私はむしろ、これは公式が腐女子を相手に煽ってきた話だったと思います。あの1話を作った公式ですよ? 売り方もファン層も熟知している。ファンの間で考察が流行っていることも知っている。そんな公式が、逆に腐女子をネタにしてきた回だったのかなと思います。ホモネタをふんだんに扱ってギャグにしてきた。裏を返せば、おそ松もカラ松も(一松も)ノンケであると宣言したようなものです。まあノンケだからって折れるほどヤワなイマジナリーチ〇コではないんですけど……。むしろノンケが同じ顔の兄弟に恋をして葛藤するの、めっちゃ美味しいし……。これは釣りだ、煽りだ、馬鹿にされてるんだぞ、踊らされてるだけだ。理性では分かっています。けれど私は軽率な腐女子です。それに16話はギャグ回としても相変わらずめちゃくちゃ面白かった。二つの側面で思いきり笑って、楽しんだ気持ちは否定出来ません。同じアホなら、踊らにゃ損です。

 次回は十四松回ですね。楽しみです。あと先日ブルーレイの一巻を予約したので、それが届くのもすごく楽しみ。